もらい事故の物損の示談を先日終えました。
結論から言えば、某任意保険会社が最初に提示してきた物損に対する賠償額は397000円だったのですが、交渉の結果+248660円の645660円で決着となりました。
やっぱり、長いこと対人折衝の仕事をしていると、こういうときには役立ちますね。
それに、新規開拓の営業に比べたら、交渉はお互いの着地点を見つけるだけなので楽勝でした。
今日は、書面などの証拠を提示しながらお話ししますので、交通事故の示談交渉に興味がある方だけでなく、交渉力をアップしたい方も是非読んでみてください!
目次
保険会社は賠償を少なくすることを考える
最初に言っておきますが、任意保険会社は被害者の味方ではありません。
特に、私のような100:0のもらい事故の場合は、加害者側の任意保険会社が全額保障することになりますし、先方のお客さまは加害者であって、被害者の私ではないから尚更です。
もちろん、過失の無い被害者に対して失礼な態度などを取ることはありませんが、極めて冷静、事務的に対応されますよ、本当に…
当たり前と言えば、当たり前なんですけどね。
保険会社と言えども、他の会社組織と同じで営利追及が目的のひとつですから、保険の掛け金をしっかりと納めてもらうだけでなく、事故などのときに出来るだけ保険金を支払わない方がいいわけですから。
ですから、保険会社が最初に提示してくる賠償額は、相場よりもかなり低いと認識して示談することが重要です。
最初の提示額は397000円でした
さて、ここからは本題である示談交渉の経緯を証拠書類を提示しながらお話しますね。
まず、もらい事故から数日後、速報と言うことで物損に対する賠償額の連絡が来ました。
その額は397000円。
金額の算出基準としては、同車種・同グレードで走行距離が近い車の中古車市場価格(私の車は10年落ちの車なのでレッドブックには基準価格が載っていなかったので)都のこと。
そして、速報の連絡が来てから、更に数日後に届いたのが以下の書類です。


画像を見てもらえばわかる通り、時価額397000円に対し、修理費用が953402円と556402円も上回ってしまっています。
こういう状況のことを保険会社の用語では経済的全損と言います。
(被害者にとっては不経済でしかないんですけどね)
ちなみに、知らない方もいると思いますので念の為説明しておくと、経済的全損の場合に保険会社が保証してくれる賠償額は時価額が上限で、修理費用を全額保障してくれるわけではありません。
つまり、何も示談交渉しなければ、事故車は廃車、手元には397000円で終了~という状況だったわけです。
(怪我に対する慰謝料や賠償は別です)
最初は素人のふりをして先方の出方を伺った
今回の示談交渉で私が取った戦略は、「まずは素人のふりをして相手の出方を伺う!」でした。
交渉の現場では、本来狙っている着地点よりも大幅な主張をし、譲歩することで狙っている着地点に落ち着かせる手法が主流です。(特に欧米人の交渉はこういう傾向が強い。スポーツ選手の代理人など)
ただ、今回の場合はこちら側から仕掛けられる性質の示談ではありませんので、必然的に出方を伺うことになったわけです。
一番最初に、先方の保険会社が提示してきた賠償条件は以下の2つでした。
- 時価額397000円
- 代車の早期返却分の日割り計算分
1に関しては、先ほどお見せした中古車4台の平均額。
2に関しては少し説明しますね。
代車を無料で使える期間を1回目の時価額の提示日から1ヶ月と区切られました。
そして、30日借りられるところを早めに代車を返却すれば、その分は日割り計算して397000円にプラスしますということになったのです。
代車代が1日あたり4000円だったので、仮に15日で返却すれば、本来代車を借りていられるはずの残りの15日に4000円をかけた60000円を時価額にプラスしますというという意味です。
現時点で確定したのは、397000円+代車の早期返却分ということになりました。
2回目の電話で先方の条件が変わってきた
さて、ここで私には疑問点があったんです。
それは、どう考えても先方の保険会社が提示してきた時価額が低すぎるということ。
先方が時価額の根拠として同封してきた中古車の情報は、どう考えても市場価格の中でもかなり安いものばかりを集めたものだったのです。
「よくもこんなに安いものを見つけたな」って感心するくらいのレベルですよ、本当に。
ですので、先方の担当者にこう言ったんです。
「これ、どう考えても安い車ばっかりですね。これでは納得できません。」
すると、こう言われました。
「では、ご自身で同車種・同グレード、同走行距離の中古車情報を集めて弊社までご郵送ください!」
この時点で、「こちらが価格の高い同車種・同グレード、同走行距離の中古車を見つければ、交渉材料になりそうだな」と判ったので、念には念を入れて確認のために以下のように聞きました。
「では、現時点では時価額397000円と代車の早期返却分、それと、同車種・同グレード、同走行距離の中古車で価格の高いものを見つければご考慮頂けるということですね!」
すると、1回目のときとは違うことを言い出したのです。
「397000円をお認め頂いた場合は、代車の早期返却分をお支払致します」
すんなり示談成立といかなそうだと踏んだのでしょうか、先方は微妙に修正をかけてきました。
時価額のアップに成功
さて、私はITの仕事もしていますので、中古車の情報探しはお手のものです。
一般的にはカーセンサーやgoo-netなどの中古車情報サイトで探す方が多いのですが、全く違う方法も含めていろいろ検索した結果、簡単に加害者の保険会社が提示してきた時価額よりも高い価格の同車種・同グレード、同走行距離の車が見つかりました。
私が検索で見つけた中古車の平均価格は482400円。
これに関しては、先方の提示してきた397000円と私が主張した482400円の平均額439700円(+42700円)にすんなり時価額がアップしました。
一体、最初の提示額って何だったんでしょうね(汗
新車購入費用の手続き費用の一部も認めさせる
また、時価額を大きく上回る修理費をかけて10年落ちの車に乗り続けるつもりが全くなかったので、早々に新しい車を探して目途を付けていました。
そして、新車購入手続きにかかる費用の一部の36860円も賠償額として認めさせました。
この時点で、439700円+36860円の賠償額は確定です。
交渉で大切なのは、1つ1つ確定させていくことです。
そうしないと、最後に全部ひっくり返されますからね。
ただ、私の中では「代車の早期返却分は397000円の1回目の提示額を認めた場合のみ」が引っかかっていてどうしても納得できません。
先方の任意保険会社の物損担当者は「何度も言いますが…」と前に説明したと主張するのですが、20年以上も営業の世界で生きてきた私ですので、言った言わないに関しては、細心の注意を払っているはずです。
そこで、確認してみることにしました。
録音を聞き直したら、やっぱり言っていなかった
実は、私は加害者の保険会社とやり取りするときは全てICレコーダーで録音してあったので、1回目のときの録音を聞き直したところ、先方は以下のように言っていたのです。
「397000円と代車の早期返却費用以外に保証できるものはございません。」
何度、聞き直しても「397000円をお認め頂いた場合」という条件は付いていません。
やっぱり、私がすんなり示談OKしなさそうだと思ったので、軌道修正したのでしょう。
このことに確信が持てた私は、最後に大きな駆け引きに出ました。
宮本武蔵作戦
「これ以上はお認め出来ません!」
示談交渉がこんな状態になったので、私は戦略を考えて最後の賭けにでることにしました。
名付けて「宮本武蔵作戦」
佐々木小次郎との巌流島の決戦にわざと遅刻していった作戦ではないですが、先方の保険会社を焦らす作戦をとりました。
先方の保険会社の担当者としては、1円でも賠償額を下げるのと同時に、訴訟などにならずに早期に示談成立させることが評価に繋がるのは想像に難しくありません。
しばらく放置していると、業を煮やした先方の物損担当者が私の携帯に電話してきました。
「その後、ご検討頂けているのでしょうか?」
焦らし作戦が効いているようで、出来るだけ早く示談の決着をつけたいのがミエミエです。
この時点で、私は若干優位に立てました。
何故なら「〇〇なら示談します!」という強烈なカードを持てたからです。
但し、だからといって代車の早期返却分を先方が認めるとは思えません。
そこで、私は録音の証拠と言質をとる作戦を実行します。
以下は、先方の担当者と私のやり取りです。
私:「すみません。どうしても納得いかないので、こちらからの連絡は控えていました…」
担当者:「何がご納得頂けないのでしょうか?」
私:「代車の早期返却分が397000円を認めた場合というところです」
担当者:「ですから、前々から繰り返し何度も言っているとおりです。私も保険会社の人間として、できることしか言いませんので!」
私:「そうでしょうね。〇〇さん(先方の保険会社の担当者)は、言ったことには責任を持つ方だと思っていますよ。」
担当者:「はい、その通りです。」
(「言ったことに責任を持つ」に対して「はい」と言質を取った)
ここで勝負をかけました。
私:「それではお聞きしますが、実は私は〇〇さまとのやり取りの全てを録音してまして、どうしても納得いかなかったので1回目からやり取りを全て聞き直したんですよ!」
担当者:「・・・・・」
私:「そうしたら、1回目の時価額の提示のときに、「397000円をお認め頂いた場合は代車の早期返却代を支払います」という条件は付いていなかったんですよね。」
担当者:「・・・・・」
私:「先ほど、〇〇さまは『できることしか言いません』とおっしゃっていましたし、』言ったことには責任を持つ』に対して『はい』とおっしゃいましたよね。手元に録音がありますので、〇〇さまもお聞きになりますか?」
これで勝負ありです。
「では、おいくらならご納得頂けるのでしょうか?」と先方が折れてきたので、その後は簡単に代車の早期返却分も賠償額にプラスされることになりました。
本日のまとめ
今回の件は別にごねたわけではありません。
過去の判例などを調べて正統な主張をしたまでです。
しかし、世の中には交渉事が苦手な方や、そもそも無知が原因ですんなり示談交渉にOKを出している方も多いのが現実だと思います。
人生で都合のいいようにされないためにも、対人折衝能力を付けておきたいものですね。