私が経営コンサル営業マン時代に実際に経験した実話を出来る限りリアルにお届けてしている法人営業物語の92回目は、組織を乱す元サラ金会社の支店長との壮絶バトルについてです!
ベンチャー企業は生き残るために日々戦い続ける運命にあるのですが、その戦いは外だけでなく中(社内)にも存在します。
創業1年目こそ全然業績が上がらず倒産寸前にまで追い込まれたものの、2年目以降は順調に業績を上げ億単位の社内留保も確保し、社会保険なども完備しました。
しかし、大企業に就職するような優秀な人材が集まるはずもなく、面接に来るのは脛に傷を持つような人ばかり。
そして、その中の一人に元サラ金会社の支店長の方がいたのですが、言葉は悪いですがどんでもない野郎だったんです…
今回は、その元サラ金会社支店長との壮絶なバトルについてお送りします。
私が不在の面接で合格した元サラ金会社支店長
このころの私は、月の半分は名古屋や大阪に出張していたので、任されていた面接官の仕事ができないときが多々ありました。
そして、私が不在の面接で合格して入社することになったのが元サラ金会社支店長のTさんだったんです。(以下Tさんと書きます)
別にサラ金会社に偏見はありません。
ただ、実際にTさんに会ったときに、どす黒いオーラを感じたんですよね。
「先入観で人を判断してはいけない」
こう思ってこちらから積極的に話しかけると、出身地が私と同じ山梨県と言うことが分かり思いのほか話が弾んだんです。
「思ったよりはいい人そうでよかった」
ただ、私の嗅覚と言うのでしょうか、「何かありそうだ」という予感がしてならなかったんですよ。
そして、その予感が当たることになってしまうとは、このときは思ってもいませんでした。
部下Kからの密告
私の心配をよそに、Tさんは素直に新人研修や業務などをこなしていました。
Tさんは私よりも年上の40代でしたが、年下の上司の私に対する態度も非常に良かったんです。
ただ、仕事に対する熱意や勢いみたいなものが足りないんですよね。
「40代で慣れない業界への転職だし、こんなもんなのかなぁ~」くらいに思っていたのですが、実はとんでもない裏を持った人間だったんです。
「白井さん、ちょっと二人っきりでお話したいことがあるんですが…」
私が一番期待していた部下のKさんがら呼び出され、オフィス近くのスタバに行くことにしました。
「どうした?急に改まって?」
私の経験上、部下からの「大事なお話があります」の多くは「辞めたい」という話が多いので、ドキドキしながら質問すると意外な答えが返ってきたんです。
「新人のTさんなんですけど、社長や白井さんがいないところでは全然違うんですよ…」
部下のKさんによると、営業部のみんながテレアポをしている中、「こんなアホらしい業務なんてやってらんねーよ」とデスクの上に足をあげて踏ん反りかえっているというじゃないですか。
「ことあるごとに会社の悪口、仕事の不満ばっかりなんで、めちゃくちゃ悪影響だと思います!」
部下のKさんは、Tさんに対して何度も文句の一つも言ってやろうと思ったことはあるものの、20代の自分が40代の大人に対して言い出せずにいたらしいんです。
「よく報告してくれた。あとは俺に任せてくれ」
そして、私は月末のミーティングでこの件について取り上げることに決めました。
元サラ金会社の支店長Tさんと一触即発
部下のKさんから報告を受けた月の月末。
今月の数字の報告と反省、次月の目標などの普段通りのミーティングが終わったあと、「ちょっと、話したいことがあるんだけど、もう少しいい?」と、帰り支度をしている営業部のメンバーに声をかけました。
多分、世の中の他のマネージャーであればこんなことはしないと思いますが、私は性格上回りくどいことが大嫌いなので、単刀直入に切り出したんです。
「Tさん、会社やこの仕事に対して不満が多いようだけど、そんなに不満があるならいい機会だから言ってもらえるかな?」
「突然なんですか~。そんなことありませんよ」とTさんは笑ってごまかそうとしましたが、私は「何の根拠もなく、こんなことは言わないですよ」と言うと、営業部の部屋は凍り付いたような空気になり、しばらく沈黙が続きました。
「何か私が疑われてるみたいで感じ悪いっすね」
沈黙を破ったTさんは、今まで私の前で見せたようなことがない態度だったので、私は更にこう言ったんです。
「じゃあ聞くけど、みんながテレアポしているときに『アホらしい』って言ったり、踏ん反り返っているっていうのは本当?」
すると、Tさんの顔が見る見る真っ赤に変わり、ものすごい形相で怒鳴り始めたんです。
「どういうことだよ!失礼だろ!!何か証拠でもあるのか?あるなら出してみろよ!!!」
私はTさんがふんぞり返っている映像やネガティブ発言の音源などを抑えているわけではないので証拠はありません。
ですが、このときのTさんの激情ぶりを見て、部下Kさんの報告は本当だったんだと確信しました。
ただ、Tさんはなかなか自分の非を認めないんですよね。
そんな私とTさんの口論の様子を見兼ねたのか、部下のKさんがこう切り出しました。
「Tさん。この間白井さんが出張で1週間いなかったときに、『こんな仕事やってらんねーから、適当に外出して風俗にでも行こうぜ!』って行ってたじゃないですか!あれは何だったんですか?」
首根っこを掴まれたTさんは、しどろもどろになって慌てていましたが、何と開き直ったんです。
「毎日毎日電話してバカみたいな仕事やってられませんよ」
私はその瞬間、ぎゅっと握りしめた拳で近くにあったホワイトボードをぶん殴ってこう言いました。
「お前がどう思おうが勝手だけどな、みんな人生かけて戦ってんだよ!その邪魔をするようなことをしておいて開き直ってんじゃねえ!!!」
そこからは、もうめちゃくちゃです。
「はあ!?お前が今やったのは脅迫だろ?暴力に訴えてるのか?警察に行くぞ!」
「行くなら行け!お前みたいな舐め腐ってる奴だけは絶対に見過ごせねえんだよ!!」
今だったら、もう少し冷静に対処できたと思います。
ただ、このときは自分でも信じられないほど熱くなってしまいました。
多分、創業から参画した会社や、その会社で働いているメンバーへの愛情が自分が思っている以上に強かったのでしょう。
社長に呼び出されて言われた一言
実は、この一触即発のミーティングをしているとき、奥の部屋に社長がいて聞いていたんです。
ですから、呼び出されたときは「あれはやり過ぎですよ」と叱られると思いました。
ただ、社長はこう言ったんです。
「怒鳴っている声が聞こえたので何事かと思いました。ただ、私はあれで良かったと思っています。あのような人間(Tさん)は、あの位しないと白状しないでしょうし。自分が悪いという自覚がなければ、辞めた後にうちの会社のことを何て言うかも分からないですからね。」
社長の言葉はありがたかったですが、その一方でこうも思いました。
「こういう役回りっていつも俺ばっかじゃん」