
アップセルやクロスセルを営業で用いて売上を激増させた様子を目の当たりにして驚いた経験があります。
アップセルとクロスセル営業の威力を知っていただくために、私が過去に所属していた訪販会社の事例をご紹介しますね!
※ この訪問販売物語のシリーズは、営業マンのみなさんの参考になればと、私の過去20年間の営業人生(BtoCのとき)を出来るだけリアルに振り返った物語です。
上乗せ販売の勉強のため出張の打診を受ける
「ちょっと、いいかな?」
所長がEさんと私の2人に応接室に来るように言っています。
「何かしら?」
Eさんもが不安を感じるのは当然で、わざわざ応接室に呼び出されるときは絶対に何かあるんですよね。
良い意味でも悪い意味でも。
「今回は何だろう・・・」
口にはしませんが、私も不安を感じながら応接室に行くと、営業所長はタバコを吸いながらゆっくりとこう言いました。
「来週の月曜日から、どちらかに松山に行ってもらいたいと思っているんだけど、どっちが行くか決めて」
「松山ってどこやねん・・・」
心の中でそう思いながら、私は所長に質問しました。
「何のための出張ですか?」
所長がニコッとしながら答えます。
「実は、松山に上乗せ販売ですごい数字を上げている営業マンがいてね。ちょっと無視できない数字だから、どちらかに勉強しに行ってもらいたいんだよ」
ただ、結論から言うと、私は断ってしまったんです。
理由は、新規開拓の営業マンとして、誰からもトップ営業マンだと思われるだけの実力ではなかったので新規開拓に拘っていたからです。
そんな私の気持ちを察してか、突然の打診にも関わらず「私が行きます!」とEさんは松山に旅立ちました。
アップセルとクロスセルの成約率と単価に驚愕
「ただいま戻りました!」
松山に出張していたEさんが営業所に1ヶ月ぶりに戻ってきました。
そして、翌日から上乗せ販売を始めたEさんの快進撃が始まります。
どのくらいの快進撃かと言うと、電話したところの90%がアポになり、そのアポからほぼ100%の確率で契約が生まれるのですから驚きでした。
しかも、100万円超と単価も高い!
これを毎日繰り返されるわけですから、新規開拓部隊の営業マンたちが敵うはずがありません。
その月から、Eさんは新規開拓はせず上乗せ販売のみで月に数千万円を叩き出すようになったのですから、上乗せ販売バブルですよ(笑
アップセルとクロスセル営業で売れまくる理由
ここまで凄いことになるとは想像していなかったので、「どうやって上乗せ販売しているのか?」を聞き出そうとEさんを飲みに誘いました。
簡単には教えてくれませんでしたが、何とか聞き出して分かったのは「損失回避の心理を利用して追加販売をしていた」ということです。
その会社で扱っている商品は学習教材のみで他に商品はありません。
また、学習塾のように顧客と継続的に関係が続く学習系サービスとは違い、教材は売切ですから基本的には顧客との関係は1度きり。
塾のように夏期講習や冬期講習などの追加で販売できるものはありません。
ですから、普通に考えればアップセルもクロスセルもくそもないのですが、その会社の凄いところはそんな状況の中でもクロスセルやアップセル営業が出来ないかどうかを考えたところです。
そして、新規営業マンの売り残しに目をつけ、商品がひとつだけしかないにも関わらずアップセルやクロスセル営業の手法を確立してしまいました。
どういうことか、もう少し説明しますね。
その会社で扱っていた学習教材は、小学校1年生から中学校3年生の義務教育9年間分のテキスト、テキストの理解を深める・分かりやすくするためのビデオ、各種テストなどがセットになっていました。
しかし、フルセットの単価は200万円を軽く超えますので、必ず全部が売れるわけではありません。
「教材は買うけど、今回はビデオはいいです・・・」
「主要三科目は買うけど、理・社はやめときます」
それぞれのご家庭の勉強に対する考え方、子供の学力レベル、もちろん予算などの関係もあるので、単価の高い営業マンでも120万前後、つまり売り残しが必ずあったわけです。
そして、興味深いのはここから。
学習教材を購入した結果、全てをしっかりと使うお子さんってほとんどいません。
進研ゼミをとったものの古新聞と一緒に積み重なっただけというような経験をした方は多いと思いますが、訪販の営業マンから購入した学習教材も例外ではないんです。
酷いご家庭になると、宅急便屋さんが運んでいたダンボールに入ったままの状態で放置していますからね。
「でも、そんなところにアポ取って訪問したら、クレームをもらいに行くことになるだけじゃないですか?」
こう思う方もいるかもしれません。
しかし、「高いお金を払って購入した教材を無駄にしたくない」という損失回避の心理に訴えかけることが出来さえすれば、120万円の教材を購入して放置していたお客さまが、更に100万円の教材を追加で購入してしまうんですね。
これは非常に勉強になりました。
今でこそアップセルだクロスセルだと言われていますが、私がこの訪販会社で働いていたのは約20年前だったのですから、売ることに関しては凄い会社だったと思います。
最後に
「私が扱っている商品は売切だから!」
もしかしたら、その考えは固定概念なだけで、既存顧客から数字を上げる方法があるかもしれません。
今日、ご紹介した事例を参考にして、二度・三度と数字を上げることが出来ないか考えて見てください!