「会社がアポを用意してくれるのは当たり前」「別に1件くらい外したところで、またアポがもらえる」と考えている営業マンって多いですよね。

でも、そのアポ1件獲得するのに、少なくても数千円、高い場合は1万円超のお金がかかっているということを忘れてはいけません。

「宣伝広告費」「求人広告代」「アポインターさんの給与」「事務所の家賃」「電話機・コピー機などのリソース購入・リース代」「リスト代」「電気代」「電話代」

これら全てにお金がかかっていますので、あなたがもらったアポは決して安いものではないからです。

スポンサーリンク

この訪問販売物語のシリーズは、営業マンのみなさんの参考になればと、私の過去20年間の営業人生(BtoCのとき)を出来るだけリアルに振り返った物語です。

自アポで初オーダーを上げたので、所長が約束通り社アポを振ってくれたところまでは良かったのですが、そのアポは絶対に外せないアポでした…

このアポ外したら次はないからな

アポイントメント

「所長が呼んでるわよ!」

アポの休憩時間に給湯室でアポインターさんたちと世間話をしていたら、伝説のおばさまアポインターさんが私に声をかけてくれました。

「なんですかね?」

所長のところに行こうとすると、更にこう教えてくれました。

「いい!?所長には絶対に逆らっちゃダメよ。何言われても『はい』って答えなさい。そうしないと、この会社であなたはやっていけなくなるから。わかった?」

「随分、物騒なこと言うな…」

そうは思いましたが、マニュアルをサッサと暗記し、自アポで初オーダーを上げたことを評価してくれている所長は、私に対してプレッシャーをかけてきたことなど一度もありません。

そんなことを考えながら所長のデスクの前に立つと、次のように言われました。

「自アポでオーダー上げてきたご褒美な!」
そう言いながら、所長はアポ用紙を私にくれたんです。

しかし、基本的にニコニコしている所長の眼光が突然鋭くなった瞬間、次のように言われました。

「このアポ外したら次はないからな…」

たばこをふかしながら言う姿は、ヤクザや闇金の借金取りみたいな迫力です。

「は、はい…」

私がプレッシャーを感じたを察したのでしょう。

「でも、それ中一のアポだから、50万円のコースが簡単に売れるから安心して行ってこい」

私は、訳が分からないので、先輩営業マンにアドバイスをもらうことにしました。

固いアポで実力を試される

毒舌で近寄りがたいものの、面倒見がいいおばちゃん営業マンからのアドバイスはこうでした。

「あのね、教材っていうのは、基本的に学年が上がれば上がるほど売れやすいの。うちの会社のメインターゲットは小学生なんだけど、中学受験を考えているとか、成績が凄く悪かったりしない限り、教材のニーズはないのよ。」

更に続きます。

「でも、中学生くらいになると勉強もだんだん難しくなってくるし、義務教育じゃないから進学したいのであれば、絶対に勉強しなければならないでしょ。だから、簡単に売れるの!」

理屈は分かりますが、実感はありません。

そこで、おばちゃん営業マンにアポ用紙を渡して見てもらうと、次のように言われました。

「〇〇さん(アポインターさんの名前)のアポね… あの人の高学年とか中学生アポは固いのよ。あなた、所長に試されてるわね!」

「なるほど…」

でも、私も営業の素人ではありません。

研修中に丸暗記した小学生のお母さん向けの営業トークだけでは売れないということで、中学生向けのトークやポイントを教えてもらって、翌日のデモのに備えました。

外せないアポに父親乱入

横浜市の某区。
築30年は経っていると思われる一戸建てに住む中学生とお母さんが商談相手です。

「現着しました!あと10分したら入ります!」
現地に到着した報告の電話を済ませると、車の中で目を閉じて気持ちを高めました。

「月収100万円稼ぐ男になる第一歩だ!」

燃えるような気持ちが前面に出過ぎないように気を付けながら玄関に向かいました。

スムーズな商談に拍子抜け

「外したら次からアポがもらえなくなる」という状況ですから、緊張感は半端ではありませんでした。しかし、商談の方は楽勝パターン。

午後アポだったので本人もいたのですが、「いい加減本気で勉強をしないとヤバい!」という自覚がありますし、それを応援したいという気持ちの母親だったので、とんとん拍子で話が進んでいきます。

「この商談は決まりそうだな。そろそろクロージングをかけて契約だ…」

しかし、世の中そんなには甘くありませんでした。

帰宅してきた父親が激怒

「ただいま~」

商談している私の背中の方から、男性の声が聞こえたと思った次の瞬間、ビックリするほど大きな声で言われたんです。

「お前、人の家に上がり込んで何してるんだ!?」

さっきまでいい感じで話をしていた生徒と母親の顔が明らかにこわばっています。

あとで分かったことなのですが、父親は自営業。普段は日中に家に帰ってくることはないのですが、たまたまその日は仕事を早く切り上げて帰ってきたのです。

「何だこれは?こんなもん全く興味ないからな!」

テーブルの上に広げていたパンフレットや資料をクシャクシャにして、ゴミ箱に叩き込まれましたが、私は冷静でした。

小さいころからDVの父親に酷い目に合っていましたので、このくらいでは何とも思いません。ただ、「外せないアポで父親乱入なんて、超運が無いな…」と心の中で嘆きましたが。

さて、問題はここからです。

過去の営業マン人生の中で、商談中に父親乱入の経験は何度もありましたが勝率は7割程度。やはり、3割は取り付く島もないという状況で終わってしまいます。

「突然で驚かせてしまって申し訳ありません。ただ、息子さんの勉強のことですので、一緒にお話を聞いてください!」

商談中に主人が返ってきたときの鉄則に「すかさず感じよく挨拶をして、商談のテーブルにつかせる」というものがあります。話さえ聞いてくれれば、何とかなることも多いんですね。

ただ、この日の父親は機嫌が悪いのか、私の挨拶が火に油を注いでしまいました。

「興味がないって言ってんだろ!? 早く帰れって意味がわかんねーのか?」

今にも殴られそう勢いだったので、セオリー通りのやり方では通用しないと判断しました。

子供の本気が父親を落ち着かせる

「外せないアポで、イチかバチかの勝負なんてしたくないけど、もうしょうがない…」

私は心を決めると、激怒している父親に対して言いました。

「帰宅したらどこの誰だか分からない営業マンが上がり込んでいるのですから、お父さんの怒りたいお気持ちは当然です。でも、流石にそこまで怒鳴ったり、資料を捨てられるのってどうなんですかね?」

私の表情がガラッと変わったので驚いたのでしょう。
立ちっぱなしなのは変わりませんが、父親は黙って聞いています。

「こちらとしても、無理してすすめる気はありません。どうしても帰れと言うなら帰ります。ただ、私は突然来たわけではないんですよ。『お子さんが中学校の勉強についていけなくて悩んでいる』というのを聞いて、事前にアポを取ってお伺いしているんです。怒鳴るなら話を聞いてからにしてもらえないですか?」

どのくらいの時間だったんでしょうか。
長い長い沈黙が続いたあとに、父親に対して本人がこう言ったんです。

「今度はちゃんと頑張るから…」

その家庭では、小学生低学年のときに他社の教材を買ったものの全然勉強しなかったという悪い前例があったんです。

「お父さん、小学生の低学年の時とは状況が違います。お子さんもこう言っていることですし、こちらでお話を聞いていただけないでしょうか?」

子供の本気を感じたのか、怒鳴っていた父親は「じゃあ、少しだけなら…」とテーブルについてくれました。

結果は、50万円の中1~中3までの中学生コースの即決でした。

※ 長くなるので書きませんでしたが、もっと多くの攻防があったことは言うまでもありません


契約書の作成が終わり、外に出ると周りはすっかり暗くなっていました。

さっきまでの緊張感から解放されたのと、全身にビッショリかいた汗のせいで、ちょっと寒気がしたのを今でもハッキリと覚えています。

次回に続く。

営業マンに学んで欲しいこと

会社からアポがもらえるのは当たり前ではありません。

そのアポには経費がかかていますし、苦労したアポインターさんの願いも込められています。また、「上司に試されている」などの何かしらのメッセージが込められたアポかもしれません。

「アポなんてもらえて当たり前」

こう思っている営業マンの方には、よく考えてもらいたいです。