このシリーズ「法人営業物語」は、私が経営コンサルティング会社の営業マンだったときのリアルを可能な限りそのままお伝えしています。

さて、1回目の商談で感じのいい役員さんと商談できたのはラッキーでしたが、「現場に詳しいものがいる」という理由で再訪することになりました。

再訪で社長と直接対決できるというのであればウキウキなのですが、相手は取締役本部長ですので今回でどこまで話しを詰められるかもわかりません。

ただ、移動距離が長く1日がかりになってしまう企業に何度も足を運ぶのも考えものですので、私は覚悟を決めました。

「この企業に来るのは今日で最後にしよう!」

しかし、相手が一筋縄ではいかないタイプだったんです…

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横柄な態度の取締役部長

偉そうな取締役

前回と同様に、めちゃくちゃ広いオフィスの一角にあるパーテーションもない商談スペースに通されて数分、1回目の商談相手の役員さんと、取締役部長さんが現れました。

「初めまして!〇〇株式会社の白井です。本日は貴重なお時間を頂きありがとうございます!」

最高の笑顔で挨拶し名刺交換をしようとしましたが、相手の部長さんの表情が冴えません。過去の経験から「これは何かありそうだ…」と嫌な予感がしたのですが、その予感が的中してしまいます。

わざわざ役員さんが「現場に詳しい担当者がいる」ということで商談に同席させたわけですから、この部長さんからGOサインが出ないと話が進まないキーマンの一人なのは間違いありません。

しかし、肝心の本人は一貫して興味があるのかないのか全くわからない表情を崩しませんし、「あ、そう」「ふーん…」と横柄な態度をとり続けます。

商談中に私が渡した名刺をじっと見たり、裏返して見たりすることからも「何だかよくわからない業者だな…」と猜疑心や見下したような心境が読み取れます…

「なかなかやっかいなタイプだな…」と思いましたが、当たり障りのない商談を続けても意味はありません。

私は意を決して踏み込みました。

「すみません、あまり表情が冴えませんが、何かご不安や危惧されることがおありなのでしょうか?」

この一言がきっかけで、商談が大きく動き出しました。

全否定して譲らない相手に提案を通すテクニック

「いやね、話は解るんだけどさ~、実際にこんなことしたらトラブルになっちゃうでしょ!?」

コンサルティング会社がアウトソースサービスを進めると「現場のことは、コンサル会社のお前らよりも俺の方がずっと分かっているんだから!」というスタンスをとる担当者がいますが、この部長はまさにそんなタイプでした。

そして、実際にアウトソースしたときに起こり得ないリスクについて永遠と語り続けます。

このようなありもしないようなことを言われた場合、私は「それはありえません!」と直接的に切り返すことが多いのですが、このときはやめた方が無難だと判断しました。

いくつか理由はありますが、一番大きいのは「相手が社長ではないから」です。

この当時の私は法人営業の営業マンとして2年の経験がありましたので、やろうと思えば力技で相手の言っていることをねじ伏せるのは簡単です。

また、社長であればねじ伏せてその場で契約という方向に持っていけます。
しかし、担当者の場合はそうはいきません。

考えてみてください。
ねじ伏せられた担当者が「これは導入するべきです!」と後日役員会議で営業マンの提案を推すでしょうか?

特に今回の部長さんは横柄な態度ですし猜疑心バリバリですから、提案を後押しするとは到底思えません。

そこで、私は滅多に取らない手法で勝負にでることに決めました。

それは、相手の否定的意見を100%尊重しつつ利用して提案を通すというテクニックです。

私はこのようにトークしました。

「正直、ここまで現場のことを把握されている方にお会いしたことはありません。たいして現場のことを解っていないのにゴチャゴチャ文句ばかり言ってくる担当者の方の場合、ピントがずれていてお話しにならないのですが、部長のお話はまとを得ていますし、何の反論の余地もありません」

横柄な態度は取っていましたが実際に現場をしっかり把握していたので、そこを認めるところから入りました。そして更に以下のように続けます。

「部長がおっしゃっていた〇〇のケースや●●のリスクは起こり得ます。実際…」

こんな感じで、本来はあり得ないような話を思い切り肯定しました。

すると、部長さんの態度に少しずつ変化が見られるようになってきます。多分、営業マンが応酬してくるとしか思っていなかったのでしょう。自分の仕事ぶりや意見を100%受け入れてくれた営業マンに対して心を開いてくれました。

しかし、このままでは営業マン自体が導入したときのリスクを認めてしまっている状態ですので、絶対に契約にはなりません。

そこで、最後に以下のようにしかけました。

「御社は過去に※※の件でトラブルを起こしたことはありますか?(「ありません」と部長が返事)あ~、良かったです。もし、あったらお時間を頂いたのにも関わらず、こちらからお断りしなければならないところでした。というのは、先ほど部長がおっしゃっていた〇〇のケースは※※のトラブルがあった場合にのみ起こるからなんです」

こんな感じで、「このリスクは、こんなケースがある場合に起こる」と発生要因を限定したのです。

もちろん「店舗状況を把握していないのに〇〇をすれば、トラブルが起こります!」のように、発生要因はその企業に当てはまらないものを選択しましたが(笑

結果、商談の最後は部長はすっかり笑顔、いい雰囲気になりました。

ただ、上場企業ですから「役員会議に議題としてあげて、結果が出たらご連絡します!」と保留になってしまいましたが…

この商談の結果がどうなったかは、次回お話しします。

営業マンが学べること

この記事から営業マンに一番学んで欲しいことは「相手の断りに対して応酬するのではなく、逆に利用することも出来る」ということです。

どんなにいい商品やサービスでも、ありもしないことを言ってケチをつけてくる方っていますからね。

もちろん、真正面から反論して戦ってもいいですよ。

ただ、戦うこと自体がリスクになる相手もいますので、今回のような相手の断りを利用するテクニックは習得しておいて損はありません。